「松之山温泉って、日本三大薬湯らしいけど実際どうなの?」 草津・有馬と並ぶと聞いても、県外に住んでいるとイメージが湧きにくいと思います。 先に結論から言います。松之山温泉の日帰り施設「鷹の湯」は、熱いお湯が好きな人にはたまらない場所です。逆に、ぬるめでゆっくり長湯したい人や、サウナや食事までセットで楽しみたい人には、少し物足りないかもしれません。 7月下旬の平日夕方に、実際に入ってきました。 お湯の熱さ、設備の実際、そして「自分には合わないかも」と感じた人向けの選択肢まで、正直に書きます。 温泉のあとに寄ったお蕎麦屋さんと、駐車場そばのアート作品も紹介します。半日の過ごし方が、そのままイメージできるはずです。 この記事でわかること
- 鷹の湯のお湯の特徴(日本三大薬湯・源泉90度超の熱さ)と泉質
- 営業時間・料金・定休日などの基本情報と、17時以降の割引
- 実際に入ってみた体感(内湯・露天の熱さ、館内設備)
- 熱い湯が苦手な人向けの代替施設「ナステビュウ湯の山」との比較
- 温泉のあとに立ち寄れる蕎麦処「寿々木」と大地の芸術祭の作品
松之山温泉「鷹の湯」はどんな温泉?まず結論から

松之山温泉があるのは、新潟県十日町市。長野県との境に近い、山あいの豪雪地帯です。 鷹の湯は、その温泉街のちょうど真ん中にある日帰り温泉施設です。 泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉。ひとことで言うと塩分が濃くて、温度が高い。これが松之山のお湯の性格です。 新潟や東北地方の方言で言うと「しょっぺー湯」ってやつですね 意味は「塩辛い」という意味です。 塩分が強いおかげで、湯上がりの体がなかなか冷めません。豪雪地帯の温泉として長く親しまれてきた理由が、入ってみるとよく分かります。 この「薬湯」と呼ばれる実力は数字にも表れています。松之山温泉は、含まれる成分の一部が温泉法の基準値を大きく超えるほど濃く、なかでもホウ酸の含有量は日本一とされています。塩分やホウ酸などがぎゅっと詰まっているぶん、湯上がりに体がぽかぽかと長く続くわけです。 そして「熱い」の正体がこれです。施設の脇に立つ案内板によると、鷹の湯の源泉は90度を超えているとのこと。しかも自然に湧き出している自噴泉です。
さすがにその温度のままでは入れないので冷まして使われていますが、それでも浴槽の温度は高め。この記事で何度も「熱い」と書くのは、そういう理由です。 案内板を読んでもうひとつ面白かったのが、このお湯の成り立ちでした。火山の熱で温まった一般的な温泉とは違うのだそうです。1200万年ほど前の地層に閉じ込められた海水(化石海水)が、地圧で温められて湧き出している――いわゆる「ジオプレッシャー型」と呼ばれる、全国的にも珍しいタイプの温泉なのだそうです。 山の中なのに塩辛い。その理由が地質にあると知ると、湯船に浸かる時間の感じ方が少し変わります。 名前の由来も案内板に書かれていました。 今から700年ほど前のこと。同じ谷あいに毎日舞い降りる鷹を、木こりが不審に思ったそうです。行ってみると、そこに熱い湯が湧いていた——という言い伝えです。 ※開湯時期については「800年ほど前」とする資料もあり、諸説あるようです。
こんな人に向いています/向いていません
正直に振り分けておきます。 向いている人
- 熱いお湯が好き
- 余計な設備のないシンプルな温泉が好き
- 静かに入りたい(17時より前の時間帯がおすすめです)
向いていないかもしれない人
- ぬるめのお湯で1時間くらい長湯したい
- サウナも入りたい
- 湯上がりに食事や仮眠までしたい
後者に当てはまる方向けの代替案は、この記事の後半で紹介します。
駐車場から鷹の湯まで、実際に歩いてみた

車で行く場合、温泉街の入口にある松之山温泉駐車場を使うことになります。日帰りなら無料です。 
ここに停めて歩き出すと、5分もかからないうちに旅館やホテルが並ぶ通りに出ます。 その旅館街を少し過ぎたあたり、通りのほぼ中央に見えてくるのが鷹の湯です。 正直に言うと、温泉街の規模はそれほど大きくありません。端から端まで歩いて全体が見渡せるくらいのサイズ感です。 ただ、これは物足りないという意味ではありません。両側を山に挟まれた谷あいに旅館が身を寄せ合っている感じです。 私が行った日は蒸し暑い夕方で、街灯にはまだ灯りが入る前の時間でした。人通りはほとんどなく、聞こえるのは川の音くらいです。
鷹の湯の基本情報
先に基本情報をまとめておきます。ここだけ押さえておけば、まず空振りしません。
- 営業時間:11:00〜20:00(受付終了19:30)
- 定休日:毎週木曜日(休館日が祝日の場合は前日が休み)
- 入浴料:大人600円/17:00以降500円/小学生300円
- 駐車場:無料
- 敷地内は全面禁煙/館内で無料Wi-Fiが使えます(※私が訪れた時点での掲示内容です)
注目してほしいのが17時以降の100円引きです。これは知らずに行くと損をします。(この夕方割引と館内設備は私が訪れた際に確認したもので、公式サイトでの明記は見当たりませんでした。最新の扱いはお出かけ前にご確認ください) 私が入ったのも17時過ぎで、支払いは500円でした。 今のインフレを考えると比較的リーズナブルに感じます。 そしてこの時間帯には、料金以外にもうひとつ見どころがあります。後ほど詳しく書きます。 
チケットはQRコード付きのレシートのようなもので、自動改札のようなゲートにかざして入ります。共同浴場のイメージで行くと、この部分だけ少し現代的で意外でした。


館内でもうひとつ目を引いたのが、温泉むすめ「松之山棚美(まつのやま たなみ)」のパネルです。 温泉むすめは、全国の温泉をキャラクター化するプロジェクト。棚美は松之山温泉の担当で、2025年には松之山温泉愛郷大使への就任も決まっています。声優は石原夏織さん、キャラクターデザインは鍋島テツヒロさんです。 私が見たパネルにはサインが入っていました。ファンの方なら、鷹の湯に寄る理由がひとつ増えます。 営業時間は変更されることがあります。私が行ったときも、入口に手書きの時間変更のお知らせが貼ってありました。 そして館内には翌日の休館を知らせる掲示も出ていました。木曜に行こうとしていた人は、この掲示を見る前に閉まった扉の前に立つことになります。 ※最新の営業時間・料金は、お出かけ前に十日町市観光協会の公式サイトでご確認ください。 ▶ 温泉街や源泉の情報は Google検索「松之山温泉 湯元」 でまとめて確認できます。
鷹の湯のお湯は、想像より熱かった
内湯も露天も温度は高め
脱衣所を抜けて浴室の扉を開けると、熱波を感じました。 内湯に足を入れた瞬間、「あ、これは熱いほうだ」と分かる温度でした。じわじわ慣らしていくというより、覚悟を決めて一気に肩まで沈むタイプのお湯です。 蒸し暑い夏の夕方に、あえて熱い湯に入る。矛盾しているようですが、これが妙に気持ちいい。 入っている時間は長く取れません。数分浸かって上がり、体を冷ましてまた入る。この繰り返しになります。 塩分の濃さは、湯船から上がったあとの肌でよく分かりました。さらっとしているのに、なんとなく膜が張ったような感触が残ります。
露天風呂から聞こえてくるもの
露天は、内湯よりわずかに温度が落ち着いていました。 石を組んだ浴槽に、ヒノキの湯口からお湯が落ちています。縁に腰かけて足だけ浸けている人もいました。柵の近くに座り涼む人もいました。 ここで印象に残ったのは、景色より音です。 すぐそばを小川が流れていて、その水音がずっと聞こえています。派手な絶景があるわけではありません。見えるのは松之山の緑と、山の斜面くらいです。 着いた直後はまだ客が少なく、この音だけを聞いている時間がありました。それだけで、来た価値があったと思えます。
17時を過ぎると、地元の人の憩いの場になる
夕方前まで、客はまばらでした。 ところが100円引きになる17時を回ったころから、空気が変わります。仕事を終えた農家の方が次々に入ってきて、浴室が一気に賑やかになりました。 湯船で交わされているのは、農作業の話と天気の話です。 観光地の温泉というより、生活の一部としての風呂。ここは地元の人の憩いの場なのだと、その時間に居合わせて初めて分かりました。 静かに入りたいなら17時より前。地元の空気ごと味わいたいなら17時以降。100円安くなる代わりに、静けさは手放すことになります。
設備はシンプル。サウナはありません
期待値を先に合わせておきます。
- サウナはありません
- 食事処もありません
- 休憩室は小さめ
湯上がりに寝転がってのんびり、という過ごし方には向いていない施設です。 ただ私は、これを欠点だとは思いませんでした。ここは湯に入ることだけに集中する場所だと考えると、むしろ潔い。 滞在時間は30分。それで満足して出てきました。逆に言えば、半日かけてゆっくりしたい人には短すぎます。
熱い湯が苦手なら「ナステビュウ湯の山」という選択肢
今回は寄っていませんが、私が松之山に来るときによく使うのが「ナステビュウ湯の山」です。何度も入っているので、こちらも紹介させてください。 鷹の湯と同じ松之山エリアにある日帰り温泉ですが、性格はかなり違います。
- サウナがある
- 食事処がある
- 休憩室が広い
畳の休憩スペースで寝転がって過ごしている人をよく見かけます。湯上がりに時間を使いたいなら、こちらのほうが確実に快適です。 そして重要なのが、内風呂に熱めとぬるめの2種類があること。温度を選べるので、熱い湯が苦手な人でも自分のペースで入れます。 露天からの眺めも開けていて、里山の景色が広がります。 子ども連れなら、私はこちらをおすすめします。ぬるめの浴槽があるかどうかは、家族で行くときの安心感がまったく違うからです。
鷹の湯とナステビュウ湯の山、どう使い分ける?
| 鷹の湯 | ナステビュウ湯の山 | |
|---|---|---|
| お湯の熱さ | 熱め(内湯・露天とも) | 熱め・ぬるめを選べる |
| サウナ | なし | あり |
| 食事 | なし | あり |
| 休憩室 | 小さめ | 広い |
| 滞在時間の目安 | 30分〜1時間 | 2時間以上も可 |
| 向いている人 | 熱い湯を味わいたい | ゆっくり過ごしたい・家族連れ |
両方まわるなら、熱い鷹の湯を先に、ゆっくりできるナステビュウを後に。この順番のほうが体が楽です。 ※ナステビュウ湯の山の営業時間・料金は変更される場合があります。公式サイトでご確認ください。
温泉のあとは「寿々木」で妻有そばのサラダ蕎麦

温泉街にある「寿々木(すずき)」というお店で食事をしました。 ▶ お店の場所や口コミは Google検索「鷹の湯 寿々木」 からどうぞ。 店頭の暖簾に書かれていた言葉が印象的でした。山の中なのに魚のメニューが多い理由を、「松之山は昔、海だったから」と説明しているのです。 鷹の湯の案内板で読んだ「大昔の海水が湧いている」という話と、きれいにつながります。この土地では、温泉も食も同じ地面の記憶から来ているわけです。
頼んだのはサラダ蕎麦(夏期限定・1,380円税込)。 妻有そばというのは、この地域で食べられている蕎麦のことです。つなぎに布海苔(ふのり)という海藻を使うのが特徴で、独特のつるっとした喉ごしになります。 その妻有そばを、トマト・豆腐・海老・野菜と一緒にサラダ仕立てにした一皿でした。 熱い湯から上がった後の体に、冷たい蕎麦がよく合います。夏に鷹の湯へ行くなら、この組み合わせは覚えておいて損がありません。 ほかにも、こんなメニューがありました。
- ざる蕎麦 950円
- ざるとろろ蕎麦 1,300円
- 天ざる蕎麦 1,600円
(いずれも税込)
店内の様子と、知っておくと安心なこと
店内はきれいに整理されていて、カウンター席とテーブル席があります。 面白かったのが、テーブルに置かれていた籠です。中に入っていたのは生の玉浅葱で、こんな案内が添えてありました。 「蕎麦の薬味です。ひと口かじりながら食べてみてください。皮は剥いてね!」 言われたとおりにかじってみると、思っていたより辛くなく、蕎麦の甘みが引き立ちます。これは店内に座らないと絶対に分からない体験でした。 壁際には黒板メニューがずらりと並んでいて、こちらは完全に夜のお店の顔でした。地元の食材を使った一品が数十種類。日本酒の瓶も棚に並んでいます。 
今回は食事だけでしたが、次に来るときは夜に寄ってみたいと思わせる品揃えでした。 知っておくと安心な点をまとめておきます。
- カード・PayPayが使えます
- 入口に「当店は日本語のみの対応です」という掲示があります(英語メニューはありません)
- 営業時間は11:30〜14:00/17:30〜21:00(20:30ラストオーダー)
- 定休日は月曜
※営業時間・定休日・価格は変更される場合があります。お出かけ前にご確認ください。
駐車場のすぐそば、大地の芸術祭の作品が2つあります
車を停めた松之山温泉駐車場のすぐそばに、大地の芸術祭の作品があります。 「メタモルフォーゼ―場の記憶―『松之山の植生を探る』」。笠原由起子+宮森はるなによる、2000年の作品です。 
ブロックの階段を上がると少し開けた空間に出て、その先の擁壁一面に作品が広がっています。 
近づいて驚いたのが、これが押し花ではなく陶(やきもの)だということです。 松之山に自生する植物を粘土に写し取り、焼いて、青白い釉薬をかけたレリーフ。それが数百枚単位で壁に埋め込まれています。 しかもパネルごとにテーマが分かれていました。銘板を読むと、こう書かれています。
- 羊歯類 … ゼンマイ、ワラビ、クジャクシダ、スギナなど
- 実 … ブナ、オオカメノキ、フジ、ユキツバキなど
- 花 … オカトラノオ、ヤマユリ、ネジバナ、シシウドなど
いずれも2000年の6月から7月にかけて、松之山町須山や大厳寺高原の周辺で採集されたものだと記されています。 この作品は「その土地に生える植物の形をとらえ、その土地だけの植物誌をつくる」というプロジェクトです。 説明だけ読むと抽象的ですが、銘板に実際の植物名と採集場所が並んでいるのを見ると、意味がすっと入ってきます。 粘土に写された葉脈の一本一本が、25年前のある日の松之山の森そのものなのだと気づいた瞬間、少し背筋が伸びました。
駐車場そのものも、実は作品です
見落としやすいのですが、車を停めた駐車場もまるごと作品です。 「峡谷の燈籠」。建築家ユニットCLIPによる、2000年の作品です(作品番号Y011)。
乳白色のガラスに覆われた公衆トイレ、温泉街のサイン、そして駐車場。これらがバラバラの設備ではなく、ひとつのデザインとしてまとめられています。 
名前のとおり、燈籠がモチーフです。ガラスの足元には照明が仕込まれていて、暗くなると内側から光ります。 CLIPは中里エリアでも「河岸の燈籠」というトイレの作品を手がけています。夜にガラス越しの灯りを見せるという発想は、共通しているようです。 私が行ったのは日が沈む前でした。灯りがともった姿は見られていません。20時まで営業している鷹の湯を上がったあとなら、ちょうどいい時間かもしれません。 今は黄色い看板や案内は撤去されて作品か見分けがつきにくいので注意してください。 なお、旅行者にとって地味に助かる話ですが、この公衆トイレは温泉街に入る前に使えます。 鑑賞にあたっての注意点があります。
- 屋外作品なので鑑賞は日中のみ
- 大地の芸術祭の公式サイトでは通年公開(火曜定休、冬期は火・水曜定休)と案内されています
- 私が訪れた際は現地の看板に会期の日程が掲示されていましたが、公開期間や休館日は年によって変わるため、最新情報は必ず公式サイトでご確認ください
- 料金は無料
※公開期間は年によって変わります。訪問前に大地の芸術祭の公式サイトでご確認ください。 温泉のついでに5分あれば見られる場所です。せっかく駐車場に停めるのですから、階段を上がってみてください。
まとめ|熱い湯を、静かに
鷹の湯は、熱いお湯を静かに楽しむための温泉です。 サウナも食事処もない代わりに、余計なものが何もありません。30分で満足して出てこられる、密度の濃い温泉でした。 熱い湯が苦手な方、ゆっくり過ごしたい方、子ども連れの方は、ナステビュウ湯の山を選ぶほうが満足度は高いと思います。無理に鷹の湯でなくていい。そこは正直にお伝えしておきます。 半日あれば、温泉と蕎麦とアートが全部まわれます。行くなら、私は平日の夕方をおすすめします。入浴料が100円安いうえ、地元の人で賑わう時間帯に立ち会えるからです。 熱いお湯にしっかり浸かって、そのまま静かな温泉街を歩く。それだけの半日ですが、松之山でしか味わえない時間でした。 ※木曜定休・冬季の作品休止など、空振りしやすいポイントがあります。出発前に各施設の公式サイトでご確認ください。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。また次の記事でお会いしましょう。See you next time!

