
▲ 鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館(田島征三)。旧真田小学校の校舎がそのまま会場です
新潟県十日町市の「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」へ行ってきました。
廃校になった小学校が、まるごと1冊の絵本になっている美術館です。
訪れたのは2026年9月11日(金)。「2026年の越後妻有」共通チケットを使って入館しました。
先に結論です。
いちばん面白かったのは、自転車をこぐと人形が太鼓を叩く仕掛けでした。作品を見るというより、校舎を探検している感覚に近いです。
所要時間は約1時間。カフェでのんびりするなら2時間見ておくと安心です。
注意点は2つ。美術館に近づくほど道幅が狭くなること、そして入館料は現金払いだったことです(Hachi Caféはカード・QR決済が使えました)。
鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館とは|廃校がまるごと1冊の絵本
この美術館は、十日町市鉢集落にあった旧真田小学校の校舎を使っています。
絵本作家・田島征三さんが、カラッポになった校舎を舞台に「空間絵本」を作りました。2009年に開館しています。
物語のタイトルは『学校はカラッポにならない』。
主人公は、この学校の最後の在校生3人と、学校に棲みついたオバケたちです。オバケには名前があります。みんなの笑い声を食べる「トペラトト」、夢をぺしゃんこにする「ドラドラバン」。
公式サイトによると、校舎の中のオブジェは、伊豆半島の海辺と日本海で集めた流木や木の実に絵具を塗ったものだそうです。
作品が教室に「並んでいる」のではありません。学校そのものの中へ、物語が入り込んでいるという感じでした。

▲ 校舎内に広がる空間絵本。流木や木の実のオブジェが物語をつくります

▲ 教室いっぱいに広がる空間絵本『学校はカラッポにならない』(田島征三)
見てきたもの|動かして遊べる空間絵本

▲ 木造校舎の一角。教室へ向かう途中にも、昔の小学校の面影が残ります

▲ 木造の廊下。一歩ごとに、木のきしむ音が返ってきます
廊下と教室|作品より先に「昔の小学校」が来た
正直に書くと、校舎に入って最初に感じたのは、アートの迫力ではありませんでした。
「昔の小学校って、こんな感じだったな」という懐かしさのほうが先に来ました。
大きな学校ではなく、全体的にこぢんまりとした造りです。
廊下は木造でした。一歩踏み出すたびに、木のきしむ音がします。自分の足音が、そのまま返ってくる感じです。
そして、木の匂いがしました。
この音と匂いで、一気に持っていかれました。「昔の学校って、こういう匂いだったな」と。作品を見る前から、もう童心に帰っていた気がします。
写真では絶対に伝わらないのが、この音と匂いです。 校舎の写真をいくら見ても、床のきしみは聞こえません。ここだけは、行かないと分からない部分だと思いました。
大人になってから、小学校の廊下をゆっくり歩く機会はほとんどありません。新しい美術館では味わえない、少し時間が止まったような場所でした。
自転車をこぐと、人形が太鼓を叩く

▲ 小学生サイズの自転車。大人はゆっくりとペダルを回します

▲ ペダルをこぐとワイヤーが動き、人形が太鼓を叩きます
校内には、自転車を使った仕掛けがあります。
ペダルをこぐとワイヤーが動き、人形たちが太鼓を叩く。最初は「これをこぐと何が起こるんだろう?」と思いながらまたがりました。
またがって、すぐに分かりました。この自転車、小学生のサイズです。
大人が乗ると、膝が上がりきってしまいます。ペダルが小さいので、足にうまく力が入りません。勢いよくこごうにも、こげないのです。
そばには「ゆっくりこいでください」という趣旨の注意書きもありました。長く使われている作品なので、当然だと思います。
結果、恐る恐る回すことになりました。
写真では伝わらないのが、この「思いきりこげない」感じです。 自転車の写真だけ見ると、勢いよくペダルを回している自分を想像します。実際は、壊さないようにそっと足を動かす時間でした。
そのぶん、人形が動き出したときは余計にうれしかったです。
太鼓と抜け穴|校舎を探検している感覚
館内には、太鼓を叩ける場所や、小さな抜け穴のような通路もあります。
「ここを通るの?」と思うような場所があるのは、小学校を使った美術館ならでは。
大型アトラクションではありません。でも、子どもの頃なら喜んで遊んでいたはずの仕掛けです。
作品を鑑賞するというより、校舎の中を探検している感覚に近い時間でした。
黒板の教室|明るいだけじゃない

▲ 黒板の残る教室。ここだけ少し空気が変わります
館内で少し雰囲気が変わったのが、黒板のある教室でした。
昔ながらの教室とアートが組み合わさって、不思議な空間になっています。
正直に言うと、私はここで少し怖さを感じました(笑)。誰もいない教室に作品が立っていると、ドキッとします。
もちろん、本格的なホラー施設ではありません。明るく楽しいだけではなく、少し不思議で、少し怖い。この振れ幅も、この美術館らしさだと思いました。
屋外|ヤギ型の鹿威しと、本物のヤギ

▲ 入口の、ヤギのかたちをした巨大な鹿威し。館内の動力になっています
作品は校舎の中だけではありません。
入口付近には、水の力で動く、ヤギのかたちをした巨大な鹿威しがあります。公式の作品解説によると、これが校舎内のオブジェを動かす原動力になっているそうです。
つまり、屋内で人形が動いているのは、外の水の力が届いているからです。「これ、どうやって動いているんだろう?」と考えながら回ると、館内の見え方が変わります。
ブランコに乗ると鐘が鳴る
外にはブランコもあります。
普通のブランコかと思って乗ってみたら、動きに合わせて鐘が鳴りました。
その音が、グラウンドに響きます。うるさくもなく、こもりもしない。ちょうどいい音量でした。
誰もいないグラウンドに、自分がこいだぶんだけ鐘が鳴る。これはなかなか気持ちがいいです。
こういう小さな遊び心が、館内にも屋外にもいくつも仕込まれています。
なお、屋外はすべて舗装されているわけではありません。 雨の日や雨上がりは、少し汚れてもいい靴のほうが安心です。
本物のヤギもいます

▲ ビオトープエリアのヤギ。餌はあげないよう案内されていました
屋外のビオトープエリアには、本物のヤギがいます。池・田んぼ・小川とあわせて、公式でも紹介されているエリアです。
入口の鹿威しはヤギの形ですが、こちらは本物のヤギです。校舎とアート作品のすぐ近くに動物がいるので、少し不思議な光景でした。
私が訪れたときは、ヤギには餌をあげないよう案内されていました。 近くで見るとつい何かあげたくなりますが、見るだけにしておきましょう。
Hachi Café|佐渡・タガヤス堂のドーナツ

▲ Hachi Caféの店内。椅子やテーブルも、この場所の世界観の一部です

▲ 佐渡・タガヤス堂のドーナツ。しっとりした生地でした
校内を回ったあとは、館内の Hachi Café に寄りました。
普通の休憩スペースとは少し違います。椅子もテーブルも、この場所の世界観の一部になっていました。
今回食べたのは、佐渡のタガヤス堂のドーナツです。
お店の方に聞くと、以前この美術館で働いていた方が佐渡へ移り、ドーナツ店を始めたとのことでした。
食べてみると、生地はしっとりしていて、ほんのりはちみつのような香りがします。派手なスイーツではなく、素朴な味でした。校舎を歩いたあとに、ゆっくり座って食べるのに合っています。
Hachi Caféでは、クレジットカードとQRコード決済が使えました。
鑑賞のコツ|所要時間・服装・支払い方法
実際に回ってみて分かったことをまとめます。
- 所要時間: 私は館内と屋外を合わせて約1時間でした。カフェでのんびりするなら、2時間は過ごせると思います
- 支払い: 入館券は現金で購入しました。Hachi Caféはカード・QR決済が使えます。現金は用意しておくほうが確実です
- 服装・靴: 私が訪れたときは、館内は土足厳禁で、用意されたスリッパに履き替えました。屋外は未舗装の場所があります。歩きやすい靴が安心です
- 写真撮影: 私が訪れたときは、館内の撮影は問題ありませんでした
- 携帯電話: 館内でも電波は問題なく入りました
- 休館日: 火曜・水曜(祝日を除く)。行く曜日は事前に確認してください
- 企画展: 常設展だけの日と、企画展を開催している日があります。公式サイトのイベントカレンダーで確認できます
1時間で「見た」ことにはなります。ただ、この美術館は歩いているうちに面白くなってくる場所です。予定を詰めすぎず、2時間見ておくのがおすすめです。
なお撮影については、企画展や作品によって扱いが変わることがあります。現地の掲示とスタッフの案内を確認してください。
会場までの道のり|イルカトラから車で15分、道幅に注意
今回は、十日町市内のイルカトラでランチをしてから向かいました。美術館までは車で約15分です。
ランチと美術館を組み合わせても回りやすい距離でした。
ひとつ注意しておきたいのが道路です。美術館に近づくにつれて、道幅が少し狭くなります。
場所によっては、対向車が来ると気を使います。とんでもなく危険な道ではありませんが、初めてなら速度を落として走ったほうが安心です。
駐車場は「グラウンド」です
ここは知っておくと安心です。車はグラウンドに停めます。
校庭がそのまま駐車場になっているので、白線は引かれていません。 停める位置は自分で判断することになります。公式情報では約30台です。
普通車ならグラウンドに停められます。大型車やバスは、下の空き地に停める形のようでした。
白線がないぶん、混んでいる日は停め方に少し気を使うかもしれません。

▲ グラウンドがそのまま駐車場。白線はありません
「2026年の越後妻有」共通チケットを使いました
今回は、「2026年の越後妻有」共通チケットで入館しました。
| 区分 | 料金 |
|---|---|
| 一般 | 2,500円 |
| 小中学生 | 1,000円 |
| 未就学児 | 無料 |
有効期間は 2026年4月25日〜11月8日 です。
この美術館のほか、越後妻有里山現代美術館MonETやまつだい「農舞台」など、対象施設を回れます。対象施設への入館は原則1回で、2回目は個別鑑賞料が半額になる仕組みです。
清津峡渓谷トンネル《Tunnel of Light》の割引特典も付いています。ただし、共通チケットだけで入坑できるわけではありません。時期によっては事前予約が必要なので、行く前に清津峡の公式サイトで確認してください。
いくつか施設を回る予定なら、かなり使いやすいチケットだと感じました。
ここが分かりにくい|チケットの会期と、美術館の開館期間は別
ひとつ、間違えやすいポイントがあります。
共通チケットの有効期限は11月8日まで。
美術館自体は11月23日(月・祝)まで開館しています。
「11月8日で美術館も終わり」ではありません。2つの期間は別々なので、注意してください。
基本情報|料金・開館時間・休館日
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館 |
| 所在地 | 新潟県十日町市真田甲2310-1 |
| 2026年の開館期間 | 4月25日(土)〜11月23日(月・祝) |
| 開館時間(4〜9月) | 10:00〜17:00 |
| 開館時間(10・11月) | 10:00〜16:00 |
| 休館日 | 火曜・水曜 ※祝日を除く |
| 入館料(一般・高校生以上) | 800円 |
| 入館料(小中学生) | 400円 |
| 駐車場 | 約30台(グラウンド。白線なし。大型車は下の空き地) |
| 所要時間の目安 | 約1時間(カフェ利用なら2時間) |
| カフェ | Hachi Café |
| 電話 | 025-752-0066 |
※2026年9月11日 訪問時点の情報です。会期・料金・開館状況は変わります。最新情報は絵本と木の実の美術館公式サイトおよび大地の芸術祭公式サイトでご確認ください。
まとめ|大人こそ面白い、作品を見るより「歩く」美術館
「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」は、静かに作品を眺める美術館ではありませんでした。
昔の小学校の廊下を歩き、教室をのぞき、自転車をこいで人形を動かし、太鼓を叩く。外ではブランコに乗って、ヤギを眺める。
少し不思議で、場所によっては少し怖い。それでも歩いているうちに、いつの間にか子どもの頃の感覚に戻っていました。
いちばん効いたのは、作品ではなく木の床のきしむ音と、木の匂いだった気がします。
こんな人には特に合うと思います。
- 昔の学校や、廃校の雰囲気が好きな人
- 変わったアートが好きな人
- 大地の芸術祭を巡っている人
- 小さな子ども連れで、遊べる場所を探している人
注意点をもう一度だけ。道幅が狭くなること、入館料は現金だったこと、そして駐車場はグラウンドで白線がないこと。この3つだけ頭に入れておけば大丈夫です。
私も失敗をひとつしました。屋外の鹿威しを最後に見たのですが、あれを先に見てから館内に入るべきでした。 館内のオブジェが何で動いているのかを知ってから見たほうが、面白さが違ったはずです。次に行くときは、外から回ります。
共通チケットもまだ使えるので、11月8日までに、行けていない施設を少しずつ回るつもりです。
そして2027年には「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2027」が開催されます。この場所がどう変わるのか、また訪れる楽しみが増えました。
おまけプチ情報

ねえ、なんで「木の実の美術館」なの? 絵本だけじゃないんだ?

校舎の中のオブジェが、木の実や流木でできているんだよ。公式サイトによると、伊豆半島の海辺と日本海で集めたものだそうです。

海で拾ったものが、山の学校に来てるってこと?

そういうことになるね。十日町は海がない場所だから、余計に不思議な感じがする。

オバケの名前もあったよね。トペラトト……なにを食べるんだっけ?

みんなの笑い声だよ。もうひとつ、ドラドラバンというのもいて、そっちは夢をぺしゃんこにするらしい。

こわい! でもちょっと会ってみたいかも。

校舎を歩いていると、どこかにいる気がしてくるんだよ。行くときは、名前を覚えてから入ってみてください。そのほうが、ずっと楽しいと思います。
今後も十日町・越後妻有で見てきた他の作品も紹介していきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう。
See you next time!

